CRM設計とは?重要性から設計の手順、ポイントまで徹底解説
「CRM設計とは何か?」
「CRM設計が重要と言われる理由は?」
「具体的なCRM設計の手順やポイントが知りたい」
企業の経営者やマーケティング・販促部門の担当者の中には、このようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
CRM設計とは、CRMツールやシステムで収集・管理している顧客情報に基づき、ターゲットとなる顧客に対してどのようなアプローチを行うかを構築することです。
顧客との良好な関係性を維持しつつ、LTVを高めて安定的・継続的な収益の増加を見込むためには、顧客のニーズや属性に合わせたコミュニケーション構築が必須であると言えます。
本記事では、CRM設計が持つ重要性や具体的な設計手順とポイントなどについて解説します。
具体的な施策や効果的な設計のためのポイントについても合わせて取り上げていますので、すでにCRMツールやシステムを導入されている方はもちろん、導入を検討されている方もぜひ参考にしてみてください。
1.CRM設計の概要と重要性
CRMとは、顧客関係管理とも呼ばれる施策です。
既存顧客との良好な関係性を維持・発展させることによって、自社商品・サービスのリピート率の向上を促進し、安定的な収益を見込むことを目的としています。
そして、そのような施策を進めていく際には、適切なCRM設計が必要不可欠です。
以下では、CRM設計の概要と重要性について順にご説明します。
(1)CRM設計とは
CRM設計とは、上記のようなCRM施策の目的に基づいて、ターゲットに合わせたアプローチやコミュニケーションのシナリオを構築することです。
具体的には、どのような状態の顧客に対して、どのようなプロセスで、どのようなアプローチを行うのかをシナリオとして構築します。
また、CRM設計を行う際には、CRMツールやシステムを活用することで、より効率的な実施が可能です。
CRMツールやシステムには、顧客情報だけでなく、商談内容や問合せの履歴情報までが幅広く網羅・集積されています。
これらの情報や機能を活用することで、顧客の属性や商談の進捗状況ごとに顧客が持つニーズやアプローチを行うべき最適なタイミングや方法などを分析することが可能です。
また、CRMツールやシステムの機能などについては、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
(2)CRM設計の重要性
企業が顧客と良好な関係性を築き、自社商品・サービスのリピーターとなってもらうためには、どのタイミングでどのような情報を提供するのかが非常に重要です。
例えば、顧客が初めて商品・サービスを購入したり利用を開始したりしたタイミングで、商品の使い方案内やFAQを提供すれば、顧客の信頼や満足度が向上することが期待できます。
CRM設計を行い、顧客の状態に合わせた適切なタイミングで適切なコミュニケーションをとることができれば、顧客満足度が向上し、継続的な利用や購入につながりやすくなります。
このようにして、顧客が自社商品・サービスのリピーターとなれば、LTVの向上による収益の増加も見込むことができます。
LTVとは、顧客生涯価値とも呼ばれる指標で、以下のような算定式で算出されます。
LTV(顧客生涯価値)=購買単価×購買頻度×継続購買期間
購買頻度や購買期間が継続していればLTVが高くなるため、既存顧客との取引が継続すればLTVも向上することが期待できます。
商品やサービスが多様化し、市場や消費者行動も流動化する昨今の状況では、顧客を囲い込むことによって、安定的かつ継続的な収益を見込むことは重要です。
また、適切な方法・タイミングで顧客とコミュニケーションを行うことで、企業のブランドイメージを正しく伝えることができ、ブランドイメージの価値向上という効果ももたらす可能性があることも押さえておきましょう。
2.CRM設計の手順とポイント
すでに述べてきたように、CRM設計は企業の収益増加のために必要不可欠なものです。
CRM設計は、具体的には以下の手順で行います。
- CRM設計によって解決したい自社の課題を洗い出す
- ターゲットを策定する
- アプローチするタイミングを検討する
- 伝えたいメッセージを作成する
- 各チャネルに応じた施策を実行する
- PDCAによって改善・最適化を図る
それぞれのステップで押さえておくべきポイントについても合わせて解説しますので、CRM設計を行う際にはぜひ参考にしてみてください。
(1)CRM設計によって解決したい自社の課題を洗い出す
CRM設計を行うことによって、解決したい自社の課題を設定することが何よりも重要です。
ここでの自社の課題こそが、CRM設計の目的となります。
達成目標を具体的かつ明確にすることで、どのような施策を行う必要があるのかを正しく判断することが可能です。
例えば、以下のような課題が考えられます。
- リピート率が低い
- メルマガの開封率は高いが登録者数が増えない
- 資料請求から購入につながらない
なお、課題の洗い出しを行う際には、CRM設計に関わる社内メンバーと共有しておくことが大切です。
共通認識として持っておくことで、CRM設計の目的と目標を見失わずに施策を進めていくことができます。
(2)ターゲットを策定する
解決したい課題を設定した後には、施策のターゲット層を策定します。
ターゲットをあらかじめ決めておくことで、適切なアプローチ施策を定めることができ、時間や費用を有効に活用することができます。
また、ターゲットを策定する場合には、顧客属性や購入履歴などの情報を分析しながら進めていくことが一般的です。
CRMツールやシステムの機能を活用すると、顧客情報を以下のように分類することが可能です。
- 年齢層
- 性別
- 売上
- 購入数
- 購入頻度
CRM設計の内容によって、どのような観点から顧客情報を分析するかは異なりますが、CRMツールやシステムの機能を活用することで、効率的に情報の分類・分析ができます。
なお、具体的な分析手法については、後述します。
(3)アプローチするタイミングを検討する
CRM設計におけるターゲットの策定を行った後には、ターゲットの属性や特徴に応じたアプローチのタイミングを検討していきます。
情報を欲しているタイミングでアプローチを行うことは、顧客の購買意欲を高めることにつながる反面、情報を必要としていないタイミングで行ってしまうと顧客にマイナスのイメージを与えかねません。
そのため、CRM設計では、アプローチのタイミングも重要であることを理解しておきましょう。
具体的には、以下のようなタイミングでアプローチを行うことが考えられます。
- 商品の購入直後
- クーポンの有効期限の1週間前
- 商品を使い切るタイミング
また、アプローチのタイミングだけではなく、頻度にも注意を払いましょう。
頻繁に行いすぎると煩わしさを感じられる可能性があり、逆に少なすぎると気づかれないリスクもあります。
そのため、効果的なタイミングや頻度については、実際にアプローチを行う中で顧客の反応を見ながら試行錯誤を行うことも大切です。
(4)伝えたいメッセージを作成する
メッセージは、それぞれのタイミングごとに作成するのがポイントです。
例えば、特定の商品・サービスの購入や利用を検討している顧客に対して、ほかの商品の案内を行ってもあまり意味がありません。
また、すでに商品・サービスを購入した顧客に対して同じ商品などの案内を送ると、機械的な対応と受け取られ、ブランドイメージが損なわれる可能性もあります。
そのため、顧客の属性や状態に合った最適な内容を作成することが大切です。
具体的には、以下のようなタイミングでは、以下のような内容のメッセージを送ることが有効です。
アプローチのタイミング | メッセージの具体例 |
商品の購入直後 | お礼メール |
クーポンの有効期限の1週間前 | リマインドメール |
商品を使い切るタイミング | 感想や継続利用を促進するメッセージ |
タイミングに合わせた適切な内容のメッセージを届けることで、顧客の満足度を高めることにもつながります。
もっとも、どのような情報発信が適しているかは実施してみるまでは分からないという側面もあります。
そのため、顧客の反応を見る中で適宜修正を加えるなどして、ブラッシュアップしていくことが必要です。
(5)各チャネルに応じた施策を実行する
チャネルに合わせて適切な施策を実行していくことも重要です。
例えば、ターゲットの年齢層が高い場合には、メールよりも紙の広告や手紙の方が見てもらえる可能性があります。
また、すでに一定の関係性が築けている顧客に対しては、メールだけでなく電話によるアプローチが有効な場合もあります。
このように、ターゲットの属性や自社との関係性などの要素から、適切なチャネルを用いたアプローチ施策を実行していくことが大切です。
(6)PDCAによって改善・最適化を図る
CRM設計は、一度行って終わりというものではなく、効果の測定や改善を経て最適化を目指す必要があります。
具体的には、施策を通じてターゲットの行動にどのような変化や傾向があるかを分析し、CRM設計の目標に対しての達成度合いを検証しましょう。
自社で設定した課題の解決を図るためには、CRM設計による施策の結果をもとにして、当初の想定と異なった箇所の見極めや洗い出しを行い、改善施策を運用していくことが重要です。
3.CRM設計に有益な分析手法3選
上記の(2)で触れた分析手法についてご紹介します。
CRM設計の際に有益な分析手法には、以下の3つが挙げられます。
- 顧客分析
- 売上分析
- RFM分析
それぞれにどのような特徴があるのかを見ていきましょう。
(1)顧客分析
顧客の属性などに応じて分類を行い、その傾向分析をする手法です。
CRMツールやシステムを活用して情報の分類・分析を行う際には、過去の購入履歴をもとにして自社商品・サービスの会員データに依拠しながら行うことで効率化が期待できます。
具体的には、以下のような属性ごとに分類を行うのが一般的です。
- 年齢層
- 性別
- 居住地域
分析結果を用いることで、主要顧客層へアプローチをかけるほか、利用が薄い層に対して追加のプロモーション施策を行うといった施策の立案にも有益です。
また、購入履歴の分析によって、顧客ニーズを探ることにもつながります。
自社商品・サービスが購入された理由だけでなく、購入されなかった理由を明らかにすることで、商品開発や営業活動などの施策の改善や立案に役立てることができるでしょう。
(2)売上分析
自社の売上データをもとに、その傾向や課題を分析する手法です。
具体的には、売上データを期間や顧客層ごとに分類して比較・検証します。
時期によって、どの商品・サービスの売れ行きが伸びているか、逆に低減しているかが分かるため、商品の需要の傾向などが明らかになります。
売上分析を行うことで、自社商品・サービスの中でも収益性の高いものだけでなく、顧客・市場ニーズを把握することに役立てることが可能です。
また、時期ごとの売れ行きを分析することで、CRM設計に基づく施策のアプローチのタイミングが適切であったかどうかを検証することもできます。
そのため、売上分析を行うことは、CRM設計の効果測定や検証という観点からも、非常に有益な分析手法であると言えるでしょう。
(3)RFM分析
RFM分析は、「Recency(最終購入日)」、「Frequency(購入頻度)」、「Monetary(購入金額)」という3つの指標を用いて顧客の分類・分析を行う手法です。
Recencyは、自社商品・サービスを最後に購入した日からの経過日数によって把握し、これが短い顧客ほど評価が高くなります。
また、FrequencyとMonetaryのいずれも値が大きければ大きいほど評価が高くなります。
この3つの指標を組み合わせることで、自社にとっての優良顧客を抽出することができるだけでなく、CRM設計にも活用することができます。
例えば、Recencyが低い顧客層に対しては顧客を呼び戻すような施策が必要となり、Monetaryが低い顧客層に対しては複数の商品を案内する施策を行うことが有益でしょう。
このように、CRM設計を考えることはもとより、施策の効果測定や検証を行う際にも有用な分析方法であるため、PDCAに組み込んで施策の正しい評価を行うことが可能です。
4.CRM設計の具体例
ここでは、CRM設計の具体例についてご紹介します。
代表的なものとしては、以下のようなものが挙げられます。
- DM
- プッシュ配信
- Webサイト・アプリ
具体的に見ていきましょう。
(1)DM
DMとは、ダイレクトメールの略で、顧客の手元に直接届けることができます。
主に商品・サービスに関する情報を網羅的に掲載したもので、紙で送る場合とメールで配信する場合とに分けられます。
個人宛に目に見える形で届けることができるため、商品・サービスの印象を強く残せるところに大きな特徴があります。
また、必要な情報を必要なタイミングで送ることができることもメリットです。
商品・サービスの情報を一覧性の高い紙またはメールの画面で訴求できるため、伝えたい情報がブレずに伝わりやすい点もメリットの1つとして挙げられます。
そのため、紙を用いたDMでは、表と裏で閲覧することができるハガキの形式で送ることでそのメリットを活かすことができるでしょう。
(2)プッシュ配信
スマートフォンアプリを提供している企業にとっては、プッシュ配信も効果的な施策として活用することが可能です。
プッシュ配信は、スマートフォンのTOP画面に通知付きで情報が表示される機能を指します。
商品・サービスに関するアプリを提供している場合には、プッシュ配信を用いて訴求したい商品・サービスの情報を提供することができます。
DMやメールと比べると視認性が高いため、見逃される可能性が低く、通知をタップするだけで自動的にアプリが起動されるため、コンテンツへの誘導も無駄がなく行える点が大きなメリットです。
スマートフォンのユーザーがメインターゲットとなるようなBtoC商品・サービスの場合には、プッシュ配信の活用を検討するのもよいでしょう。
(3)Webサイト・アプリ
Webサイトやアプリを活用したCRM設計も考えられます。
具体的には、過去の購入履歴から商品を使い切るタイミングを自動的に算出し、そのタイミングでリピート購入や利用の継続を促す手法です。
もっとも、このような施策を行う際には、顧客がWebサイトやアプリに訪問するというアクションが前提となります。
そのため、プッシュ配信などと適宜組み合わせた上で、顧客のアクションを促す導線を構築することが大切です。
5.効果的なCRM設計のためのポイント
効果的なCRM設計を行うためには、以下のポイントがあります。
- 設計の根拠となる顧客情報は幅広い角度から集計する
- 他社との差別化を意識する
- 取り組む優先順位を決める
順にご説明します。
(1)設計の根拠となる顧客情報は幅広い角度から集計する
CRM設計を行う際には、可能な限り幅広い角度から顧客情報を収集し、根拠を明確にしておくことが何よりも重要です。
具体的には、以下のような顧客情報が例として挙げられます。
- 顧客の基本情報
- 自社サイトにおける行動履歴
- 顧客の購買履歴
- アンケートの回答内容
ここで重要なのは、必ずしも商品・サービスの購入に関する情報に限られないということです。
例えば、自社サイト上での訪問者の行動履歴を分析することで、閲覧数が多いページと少ないページとでは顧客の属性や行動の傾向をつかむことができます。
そのようにして得られた行動分析の結果をCRM設計や施策、アプローチ方法を検討することに活用できる場合があります。
また、LPや申込みフォームのクリック率やCVRを分析することも、適切な施策を考える材料とすることができるでしょう。
このように、様々な角度から顧客の行動に関する情報を収集・分析することは、CRM設計や施策の立案に強い根拠を提供します。
(2)他社との差別化を意識する
CRM設計や施策の立案では、他社との差別化を意識し、自社の優位性を認識してもらえるような内容になるように工夫をこらしましょう。
具体的には、以下のようなものが考えられます。
- 顧客からの問合せに即日対応する
- 特定のリピーターに対して割引クーポンを発行する
- 一定額以上の購入者全員に粗品を渡す
なお、CRMツールやシステムには、顧客からの問合せ管理やサポートに関する機能が実装されており、それらを活用することも考えられます。
例えば、問合せ管理機能を活用してよくある顧客の疑問や問合せについて集約してFAQを作成して対応するなど、ツールやシステムの機能を起点としてCRM設計や施策を検討することも可能です。
(3)取り組む優先順位を決める
効果的なCRM設計を行うためには、実施する施策の優先順位をあらかじめ決めておくことが重要です。
幅広い角度から顧客情報の収集・分析を行うと、場合によっては複数の施策ができあがることもあります。
しかし、それらをすべて行うには、膨大な工数と時間やコストがかかります。
そのため、施策に優先順位をつけて、段階的に実行していくことが大切です。
具体的には、実行する難易度と実行することによって得られる効果の大きさを基準として優先順位を決めていくのがおすすめです。
また、CRMツールやシステムを導入したばかりであり、初めてCRM設計を行う場合には、予期せぬトラブルや失敗が生じる可能性があります。
そのような場合には、実行の難易度が低く、失敗しても影響が及ぶ範囲が最低限にとどまるものから着手していくなどの工夫をすることも重要でしょう。
まとめ
本記事では、CRM設計の概要や重要性、設計の手順やポイントなどについて解説しました。
CRM施策を成功に導くためには、まずはCRM設計を行うことが欠かせません。
また、CRM設計では、単発的な売上ではなく、顧客と良好な関係性を維持しながら中長期的な収益を上げることが必要となるため、顧客を深く理解することが何よりも重要です。
CRMツールやシステムの機能を活用することで、顧客の状態やニーズなどの様々な要素が浮き彫りになるため、CRM設計の際にはぜひ活用していきましょう。